ファマティナ : 鉱山を拒否するアルゼンチンの村
BBCMundo Gabriela Origlia
2015年11月11日
最初は水だった。それは9年前、リオハのファマティナ地域で、バリック・ゴールド社がラ・メヒカナ鉱山で金を掘るのに、1日1000立方メートルの水が必要という話が伝わってきた。この地域の1日当たりの水量は、750立方メートルだった。「それではわたしたちはどうすればいいのだ?」、住民たちが持った疑問だった。

これがきっかけとなって、住民たちは鉱山の露天掘りがもたらす危険性について宣伝を始めた。そしてここでは、この工業は要らないと決定した。そのときから4つの鉱山開発プロジェクトを、一つのスローガンのもとで阻止してきた:「ファマティナに手をつけることは許さない」。

テント、行進、連鎖、パンフレットの配布、ビデオ、絵、壁画、そして道路封鎖。政府の役人と会社の代表が鉱山に近づけないようにして、予期せぬ結果を獲得した。4つの会社のプロジェクトを撤回させたのだ。バリック・ゴールド、オシスコ・マイニンゴ・コーポレーション、シャンドン・ゴールド、そのあとがサルタのミダイス社。

ここの住民は30の地区からなり、ファマティナの水で生活している。多くは州関連で雇用され、いくらかの追加の収入を小規模の農業から得ている。自然の天国のなかで暮らしており、山脈の色は赤から茶色へ、緑から青色へと、光の変化とともに変わっていく。水は山頂から下へと、ミネラルを含んだ黄色で流れていく。全体の光景が、自然のマエストロの造った作品である。

アサンブレア[議会、集会]にはいろいろな色合いのイデオロギーが存在するが、その大多数は女性である。そこには教師たちがおり、青年のあいだで、持続的な啓蒙活動をおこなっている。またオマル・キンテロス主任司祭がいる。かれは着任以来、闘いに加わることに何の疑問も持つことはなかった。そして退任する地方監察官イスマエル・ボルダガライ。かれらすべてにとって、代償が伴った:刑事告訴、個人的な時間の消失、家族内の不和、脅迫、資金貸し出しの停止。しかしながらみんなが前に向かって進み続けた。

マルセラ・クラッベはアサンブレイスタ[議員]であり、リオハ市民勢力(FCR、急進党、ペロニスタ、マクリスタ、マッシスタ)からパルラスル[メルコスル議会]の議員に選出されている。彼女は最初の警告者であり、地質学の助手のために州の鉱山について
の講義をおこなっていた。「シアンについて、爆発について話した」、誕生日祝いに語った。それは街で唯一のネットカフェが集会場に変わるのに充分であった。

女性たちは毎日のように時間を、家から家へのキャンペーンにあてることが始まった。「情報で一杯にさせた」、もう一人のアサンブレイスタ、カリナ・ディアス・モレノは思いだす。2日間道路を封鎖することが決められた。なぜなら「具体化させることを」止めようと考えたからだ。最終的にピケット、交代、食事と、この活動は2年間続けられ
た。

このときからファマティナとチレシトの3500人の住民は、‐短い静かな休止期間を除いて‐生活の多くの時間を、電話での呼びかけ、メッセージ、行進のために使ってきた。当然ソーシャルネットは、組織のための重要な役割を果たした。

「そのような一日一日であった」、もう一人のリーダー、カロリナ・スフィチがまとめた。同時にその仕事は、サルタのミダイス社が約束を守って、キャンプを撤去するかチェックすることである。これはその意図を撤回した、4番目の会社であった。「ある時期、鉱物の生産によって発展することを夢見たこともあった。その危険を知るまでは。わたしたちの生活は水に依っていたのです」、ボルダガライは述懐する。

かれらの「conciencia[意識]とcoincidencia[一致]」が何年ものあいだ、抵抗を持続することができた原動力であったと、キンテロス司祭は言う。この2月、かれはフランシスコ法王に「ファマティナに手を出すな」とプリントしたTシャツを送った。法王の姿勢は、この紛争にたいする立場を正当と認めると考えたのである。「違法性の際での行動をおこなっていた。以前の司教は、コントロールするために監視人を送ってきた。わたしのおこなっていることが司牧としてふわしいかどうかと」、キンテロスは話した。

「資源は民衆のもので、かれらが決めなければならない。発掘の方法を議論するだけではない;それ以上のことだ。重要なことはつねに環境が変化するということである。このことについてわたしたちは認識しなければならない」、アサンブレイスタのパウロ・ダレッサンドロは言う。

2年前、アメリカは学校の校長を退職した。そのときからアサンブレイスタがオシスコ社にたいして継続していた封鎖の監視を、毎週木曜日に「尊厳をもって」おこなってきた。「より長い時間を、これに費やすために見つけることはできなかった」。

ロベルトはアングロスで働いていた。そこにはアサンブレアの最後のテントがあった。1日が終わったとき、そこに薪を持ち込み、1週間に2日間の監視をおこなった。いつもマテ茶とトルティジャがあった。お金がそれらのアサンブレイスタの財布から出ていった。

ラ・リオハでは、鉱山と政治は手を携えて進められた。現在のルイス・ベデル・エレラ知事は、カルロス・メネムの鉱山相アンヘル・マサについて、バリックとの協定を結んだということから、その罷免を推進した。「この州から露天掘りを禁止する法律を引き出そう」、ベデル・エレラは選挙キャンペーンで約束した。それはなされた。しかしその後撤回され、この生産方式が採用されることになる。ファマティナ地方の出身ということは、これらのことから今日良くは受け取られない。学校の生徒にいたるまで、かれは山は決して譲渡しないと話し、かれらは現在アサンブレイスタになっている。

アルゼンチン鉱業会社協会(CAEM)は、数日の後、「生産プロジェクトの閉鎖であれ、延期であれ、いかなるものも心配の対象になる」と言明した。またこの団体は鉱山開発は社会のライセンスを得たところでのみ実行に移すことができると考えている。それで許可が得られていないところでは、これを獲得するための活動を活発化しなければならない。そのために諸セクターとの対話のテーブルに加わり進めると主張する。たとえばアルゼンチン鉱山社会フォーラム(FSAM)、これには様々な社会アクタ
ーが環境に関する学術、科学、労働組合、環境保護、企業が参加しており、正義と平和全国委員会(CNJP)と連携している。

ファマティナのアサンブレイスタスは、カタマルカやハチャルから人を呼び、かれらの経験から学ぼうとした。成し遂げるために、方策を決めるための「処方箋」があるのか、説明を受けるために。ラ・リオハの州都から230キロ離れた地域に、再創造の
ための3つの力が合わさる:教会、政治権力、住民たち。そこにはケンカがあり、議論があり、一時的な怒りがあり、しかし緊急事態には、すべてが再び一緒になって働く。

「4年間の平和のときの期待を持っている」、キンテロスは言う。次期の知事である、現在のセルヒオ・カサス副知事に信頼を置く。数日後かれはミダイスの事業が取りやめられると表明した。コロンボ司教の言葉に従って:社会的合意と対話のないところでの、鉱山開発はない。

[BBCMundo のGabriela Origlia による]


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