エクアドル・インタグ地方の現在
「インタグの鉱山開発を考える」実行委員会 一井リツ子
2018年12月1日

今年3月インタグを訪れてきました。

現在、エクアドル国営企業ENAMIと同じくチリの国営企業CODELCOによる合弁事業「ジュリマグア・プロジェクト」が強行されようとする中、希少な生態系の宝庫である雲霧林では試掘作業が加速、予定の90箇所が夏季すでに終了、森の奥地で更なる試掘が現在継続されています。

「環境に配慮した責任ある鉱山開発」という謳い文句の中、私も魅られた美しい滝はすでに試掘段階で、削岩による重金属混入と思われる赤茶色の激しい変色が起きていて、(90年代にも住民の生活や農業用水である水脈に日本企業が行った試掘で被害が生じた歴史もあり)現鉱山企業は水利権も取得し、今後鉱山へ大量の水の使用が見込まれ、水の枯渇・汚染による生活への悪影響が非常に懸念されています。

現在試掘が行われているこの森は、本来住民らが水源や環境保護のためコミュニティー自然保護区(1500h)として購入した土地であり、エコツーリズムのルートともなっているのですが、悪質な手口により土地の不動産登記書が偽造売却され、裁判を行いましたが住民らはその土地所有権を奪われています。そのため森は立ち入りが制限されており、近隣の開発予定地フニン村では、住民の承認なしで重機や運搬車の通行も可能となる新たな橋の建設工事も終了、鉱山企業のオフィスなどもすでに設置されています。

のどかな村の住民らに「貧しい」と言う観念を植え付け、鉱山に引き込むのも戦略の一つだそうですが、その抵抗の強さで知られていたフニン村も、工事作業員など鉱山関連の仕事が農牧業の2〜3倍の賃金のため、住民の約8割が働く状況に。その雇用も200名→80名に減らされるなど常に雇用不安が付きまとい、また雇用喪失を理由に情報の口封じもされていて、9日間ぶっ続けのきつい労働を「奴隷のようだ」と例える声も聞かれました。

開発主義の加速により、ここインタグ地方では31件の採掘計画が持ち上がり、表面積全体の約80%の土地の採掘権が譲渡または手続き中という状況に陥り、BHP billiton(世界最大手の鉱山企業)など様々な多国籍企業が参入してきています。

抵抗運動のリーダーの一人でもあるポリビオ・ペレスさん曰く「土砂有害廃棄物、汚染水貯水池、移住、賠償金などについて全く語られず、住民の存在を無視している。法的闘争によりこの状況を少しでも改善する、国際的な支援・圧力も大切だ」と。

AALA機関誌「アジア・アフリカ・ラテンアメリカ 京都版No.169」(2018年12月1日発行)掲載


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